ベラスケスの誕生425年目を記念したコレクション
17世紀は「スペイン絵画の黄金時代」といわれ、なかでもディエゴ・ベラスケス(1599~1660)は、バロック期を代表する画家として有名です。2024年は、ベラスケスの誕生から425年目にあたる年でした。これを記念して王立スペイン造幣局から発行されたコレクションをご案内します。
<400ユーロ金貨>コイン表面には、ベラスケスが古典的な寓話と日常的な内容を混在させる手法に初めて取り組んだ作品『バッカスの勝利』をデザイン。この作品は、人間を元気づけ、理性の利かない状態に誘導する反面、詩的創造性も刺激するワインの寓意であると解釈されています。
<50ユーロカラー銀貨>コイン表面には、ディエゴ・ベラスケスの最高傑作とされる『ラス・メニーナス』(女官たち)の一部をデザイン。画家ベラスケスと女官の一人、そして幼きマルガリータ王女が描かれています。オリジナル作品は大きなキャンバスに描かれた油彩画で、手前の二人は等身大で描かれています。
<10ユーロカラー銀貨>
■ウルカヌスの鍛冶場
表面にカラーで再現されたのは、火と鍛冶の神ウルカヌスに、彼の妻である女神ヴィーナスと軍神マルスの不貞を、太陽神アポロンが鍛冶屋たちの前で打ち明ける瞬間を描いた作品です。ベラスケスは、神話の一つであるヴィーナスの不貞を通じて、古典神話の世界に私たちを誘います。
■アラクネの寓話(織女たち)
表面には、『ラス・メニーナス』に並ぶベラスケスの傑作の一つで、美術史上屈指のバロック絵画の一つとされる作品をカラーで再現。この作品は、かつて『織女たち』の名称で親しまれていましたが、近年オウィディウスによる『転身物語』のアラクネの寓話を表していることがわかりました。
■鏡のヴィーナス(ロークビーのヴィーナス)
表面には、ベラスケスの現存する唯一の裸婦画をカラーで再現。女神ヴィーナスがキューピッドの持つ鏡の前で横たわる姿が描かれています。英語圏での愛称『ロークビーのヴィーナス』は、19世紀にこの絵画が飾られていたヨークシャーのロークビー・パークというカントリーハウスに由来します。
裏面には、生誕の地であるスペイン南部セビリアの中心部に建てられたベラスケスの像が描かれています。この像は、セビリアの彫刻家アントニオ・スシージョが1889年に制作したものです。像のポーズは、ベラスケス作品『ラス・メニーナス』に描かれている画家自身の肖像に基づいています。
■ディエゴ・ベラスケス
スペイン絵画を代表する巨匠ディエゴ・ベラスケスは、カラヴァッジョの影響を受けたとされ、明暗の対照が強烈なテネブリズムのスタイルで描き始めました。歴史や文化に関わる重要な場面を再現したほか、スペイン王室や庶民の肖像画を数多く描いています。マドリードのプラド美術館は、ベラスケスの最高傑作とされる1656年作『ラス・メニーナス』(女官たち)をはじめ、彼のコレクションが最も充実した美術館として知られています。